防犯カメラ運用規程のひな形と作り方|全12条

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ネットで見つけたひな形を写して作った運用規程で、補助金の審査は通るのか——この不安には根拠があります。防犯カメラの運用規程は、補助金の要綱ごとに「いつ出すか」と「何を書くか」が決まっていて、自治体によって違うからです。千葉県我孫子市は交付決定のあと実績報告までに規程を定めて写しを出す方式、福岡県宗像市と千葉県市原市は申請の時点で添付する方式でした。検索上位の解説は記載項目を並べるところで終わっていたため、4市の要綱を原文で比べ、そのまま使える全12条のひな形と、条文ごとの決め方を整理しました。
運用規程とは|誰が、いつ作る文書か
運用規程は、防犯カメラの映像を「誰が見てよいか」「何日残すか」「誰に渡してよいか」を設置者が自分で決めて文書にしたものです。自治会では「管理運用規程」、市原市の要綱では「設置及び管理運用基準」、宗像市の要綱では「運用に関する要領」、マンションでは「運用細則」と呼び名が変わりますが、中身はほぼ同じです。
法律に「防犯カメラの運用規程を作れ」という条文はありません。それでも作る理由は2つあります。
- 補助金の条件になっている — この記事で要綱を確認した4市は、いずれも規程の作成や提出を補助の条件にしています(次の章で比較します)
- 役員や従業員に守らせるルールが要る — 個人情報保護委員会の個人情報保護法Q&A(A1-54)は、自治会・町内会やマンション管理組合も個人情報取扱事業者に該当し得るとし、A5-6は運営を担う理事等を監督が必要な「従業者」に当たると考えられるとしています。役員が交代しても映像の扱いが変わらないように、ルールを文書にしておく必要があります
個人でも、自宅の玄関や駐車場を映すカメラなら規程は要りません。規程が必要になるのは、自治会・マンション管理組合・商店会・店舗や事務所のように、複数の人が映像に触れる組織です。
補助金要綱4市の必須項目を徹底比較
補助金で防犯カメラを付けるなら、規程を出す時期は「申請のとき」と「工事が終わったあと」の2通りに分かれます。申請時に出す市で規程を後回しにすると、申請そのものが受け付けられません。4市の要綱・基準の原文を読み、規程に関わる部分だけを抜き出しました。
| 自治体 | 文書の呼び名 | 出す時期 | 規程まわりで求められること |
| 宗像市 | 防犯カメラの運用に関する要領 | 交付申請時(設置する年度の前年度8月31日まで) | 管理運用責任者及び操作取扱者届出書も添付。設置から5年間は適切に維持管理・運用する条件。機器は録画日数7日間以上 |
| 市原市 | 防犯カメラの設置及び管理運用基準 | 交付申請時(維持管理の補助を申請するときも添付) | 市のガイドラインに適合していること。町会の同意を示す総会等の会議録、撮影対象区域の住民の同意書も添付 |
| 我孫子市 | 防犯カメラ管理運用規程 | 交付決定後、実績報告まで(完了から30日以内の報告に写しを添付) | 設置目的・設置者と管理責任者・設置場所と台数・取扱者の制限・保存方法と期間と消去方法・利用と提供の制限・苦情処理の7項目を定める |
| 堺市 | 設置運用規定 | 補助基準で策定を求める(提出書類は交付要綱で確認) | 画像はおおむね30日以内で保存期間を決める。媒体は施錠等で防護。利用の日時・目的・利用者・範囲を記録。提供は捜査機関等に限り申請書で許可 |
※各市の例規集・公式ページの原文から当サイトが整理(2026年10月1日確認)。我孫子市・宗像市・市原市は交付要綱、堺市は「堺市防犯カメラ設置補助基準」(令和4年4月1日施行)。申請の受付期間や様式は年度で変わるため、申請前に各市の担当課で確認してください
表から分かるのは、申請時に出す市では「工事の前に規程を完成させる」必要があるということです。市原市はさらに、町会の同意を示す総会等の会議録を添付書類にしているため、規程の案も総会の議題に載せておくと手戻りがありません。補助金の探し方と申請の順番は防犯カメラの補助金ガイド、自治会での合意の取り方は町内会・自治会の防犯カメラ設置で解説しています。
防犯カメラ運用規程のひな形(全12条)
次のひな形は、我孫子市の要綱が求める7項目と、堺市の補助基準が求める記録・提供の手続きを全て含むように作ったものです。〔 〕の部分を自分の団体に合わせて書き換えてください。読みやすさを優先して「です・ます」で書いていますが、団体の他の規程が「である」調なら文末だけそろえてください。
| 条 | 条文(〔 〕は書き換える部分) |
| 第1条(目的) | この規程は、〔団体名〕(以下「設置者」という。)が設置する防犯カメラの管理及び運用に関し必要な事項を定め、犯罪の防止と個人のプライバシーの保護との両立を図ることを目的とします。 |
| 第2条(設置目的) | 防犯カメラは、〔地域内の道路・共用部分等〕における犯罪の防止を目的として設置し、この目的以外には使用しません。 |
| 第3条(設置場所・台数) | 防犯カメラの設置場所、台数及び撮影範囲は、別表のとおりとします。撮影範囲は、特定の個人の住居の内部を映さないよう設定します。 |
| 第4条(表示) | 設置者は、防犯カメラの設置場所又はその付近に、防犯カメラが作動中であること及び設置者の名称を表示します。 |
| 第5条(管理責任者・取扱者) | 設置者は、防犯カメラの管理責任者として〔役職名〕を置きます。管理責任者は、映像を操作できる取扱者を〔2〕名以内で指定し、それ以外の者に機器を操作させません。 |
| 第6条(保存期間・消去) | 録画映像の保存期間は〔14〕日間とし、期間を過ぎた映像は上書きにより消去します。記録媒体を廃棄するときは、データを復元できない方法で消去し、その経過を記録します。 |
| 第7条(保管) | 録画装置及び記録媒体は、施錠できる〔場所〕に保管し、閲覧用の端末にはパスワードを設定します。 |
| 第8条(閲覧) | 映像の閲覧は、管理責任者又は管理責任者の許可を受けた取扱者が、管理責任者の指定する場所で行います。閲覧したときは、日時、目的、閲覧者及び閲覧した映像の範囲を記録簿に記載します。 |
| 第9条(提供の制限) | 映像は第三者に提供しません。ただし、法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護のために必要で本人の同意を得ることが困難な場合その他個人情報の保護に関する法律第27条第1項各号に該当する場合はこの限りではありません。提供を求める者には、理由を記載した申請書の提出を求め、管理責任者が許可したときに限り、必要な範囲で提供します。 |
| 第10条(複製・持出しの禁止) | 前条の場合を除き、映像を複製し、加工し、又は外部に持ち出してはなりません。 |
| 第11条(秘密の保持・苦情) | 管理責任者及び取扱者は、映像から知り得た情報を他に漏らしてはなりません。その職を退いた後も同様とします。防犯カメラに関する苦情や問い合わせは管理責任者が受け付け、速やかに対応し、その結果を〔役員会〕に報告します。 |
| 第12条(改廃) | この規程の改廃は、〔総会〕の議決によります。 |
※当サイト作成のひな形。我孫子市防犯カメラ設置事業補助金交付要綱 第9条の7項目と、堺市防犯カメラ設置補助基準の5(データ管理)・6(利用制限)・7(苦情の処理)を条文に落とし込んだもの。補助金を申請する市のガイドラインに独自の項目がある場合は、条文を追加してください
別表には、カメラごとに「番号・設置場所・向き・撮影範囲の説明」を書き、撮影範囲が分かる写真か平面図を付けます。我孫子市は申請時に撮影範囲を記した平面図、市原市は撮影範囲の分かる写真を求めているため、申請書類と同じ資料を別表に流用できます。
条文ごとの決め方|保存期間の相場と根拠
ひな形のうち、団体ごとに中身を決める必要があるのは「保存期間」「取扱者の人数」「提供の判断」の3か所です。それぞれの決め方と、根拠になる法律・要綱を1表にしました。
| 条文 | 決めること | 目安 | 根拠 |
| 第2条 設置目的 | 何のために撮るか | 「犯罪の防止」に絞る。住民の監視や迷惑行為の犯人探しを目的に書かない | 個人情報保護法第17条(利用目的の特定)・第18条(目的外利用の制限) |
| 第4条 表示 | ステッカーの位置と文言 | カメラの付近に「作動中」と設置者名 | 同法第20条第1項・Q&A 1-13、堺市基準3(明瞭性) |
| 第5条 取扱者 | 映像を操作できる人数 | 2〜3名。役員の交代時に指定し直す | 同法第24条(従業者の監督)・Q&A 5-6 |
| 第6条 保存期間 | 何日で上書きするか | 7〜30日(下の解説を参照) | 同法第22条、宗像市要綱 別表1(録画日数7日間以上)、堺市基準5(おおむね30日以内) |
| 第9条 提供 | 誰に、どう渡すか | 警察・消防等の書面による照会に限り、管理責任者が判断 | 同法第27条第1項第1号、刑事訴訟法第197条第2項、堺市基準6 |
※条文は個人情報の保護に関する法律と刑事訴訟法(e-Gov法令検索)で確認(2026年10月1日)。第22条・第23条・第24条・第27条は「個人データ」を対象にした条文で、映像がどこまで個人データに当たるかは次の段落を参照してください
保存期間は「7日以上30日以内」で決める
保存期間は、補助金の基準が下限と上限の両側から決めているため、7〜30日の間で選ぶのが安全です。宗像市の要綱は補助対象のカメラの仕様として録画日数7日間以上を求め、堺市の補助基準は画像を「おおむね30日以内で必要な保存期間を決め」るよう求めています。ひな形の14日は、週末をはさんだ被害に翌週気づいても映像が残る長さとして置いた例です。
長く残せば安心というわけではありません。個人情報保護委員会のQ&A(A5-4)は、個人データについて利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努めなければならない(法第22条)としています。同じHDDでも台数が増えると録画できる日数は短くなるため、決めた日数が実際に残るかを業者に確認してください。保存日数とHDD容量の関係は防犯カメラ映像の保存期間で解説しています。
映像が「個人データ」になる境目
日時でしか検索できない録画映像は、個人情報ではあっても「個人情報データベース等」には当たらないと解されています(個人情報保護委員会Q&A A1-41)。個人データを対象とする安全管理措置(第23条)や第三者提供の制限(第27条)は、顔認証などで人物から映像を検索できる状態にしたときに直接かかってきます。ただし補助金の要綱や基準は、この区別に関係なく保管・閲覧・提供のルールを求めているため、規程では全ての映像を同じ厳しさで扱うのが実務的です。顔識別機能の扱いは防犯カメラと個人情報保護法、ステッカー掲示の要否は防犯カメラのステッカー掲示義務で詳しく解説しています。
自治会・管理組合・店舗で変えるところ
ひな形のうち、設置者によって書き換えるのは主に第5条(管理責任者)と第12条(改廃の決め方)です。誰が決め、誰が責任を持つかが団体の形で変わるからです。
自治会・町内会の場合
管理責任者は会長か防犯部長、改廃は総会の議決にするのが一般的です。第5条の取扱者は「役職名」で指定し、個人名は別紙の名簿に書くと、役員が交代するたびに規程を改正せずに済みます。宗像市のように管理運用責任者と操作取扱者の届出を求める市では、交代したら届出を出し直します。
マンション管理組合の場合
マンションでは、規程は管理規約にもとづく「使用細則」として定めます。共用部分の管理に関する事項は集会の決議で決めるのが原則で(区分所有法第18条第1項)、決議の要件は2026年4月1日施行の改正で変わりました。区分所有法第39条第1項は、規約に別段の定めがない限り、改正前は「区分所有者及び議決権の各過半数」、改正後は「出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」で決するとしています。自分のマンションの管理規約に総会の決議要件がどう書かれているかを先に確認してください。管理組合での導入の進め方はマンションの防犯カメラ設置で解説しています。
店舗・事務所(事業者)の場合
事業者は規程を社内規程として定め、改廃は代表者か取締役会の決定にします。店舗では従業員も映るため、第2条の目的に「従業員の監視」を混ぜないことが大事です。従業員を映すカメラの扱いは従業員を監視するカメラは違法か、複数店舗で本部が映像を見る場合の権限の分け方は防犯カメラの複数店舗一元管理を参考にしてください。
法人・個人事業主として店舗や事務所にカメラを入れる段階なら、EMEAO!に「運用規程のひな形も用意してほしい」と伝えて見積もりを取る方法があります。EMEAO!は専任のスタッフが条件に合う業者を最大8社まで無料で紹介するサービスで、申込みの対象は法人・個人事業主です。
閲覧・提供記録簿の作り方
規程の第8条・第9条を実際に動かすのは、閲覧と提供を1行ずつ書き残す記録簿です。堺市の補助基準は、媒体を利用するときに「利用の日時、利用目的、利用者、利用する画像の範囲等」を記録保存することを求めています。これに提供の判断の欄を足すと、次の表の8列になります。
| 欄 | 記入例 |
| 日時 | 2026年10月1日 19時10分 |
| 区分 | 閲覧/複製/提供 |
| 目的 | 自転車盗難の届出を受けて確認 |
| 閲覧・操作した人 | 防犯部長(取扱者) |
| 映像の範囲 | カメラ2番・9月29日22時〜9月30日6時 |
| 提供先・根拠 | 〇〇警察署・捜査関係事項照会書(書面) |
| 許可した人 | 会長(管理責任者) |
| 媒体の返却・消去 | USBメモリで提供・返却不要と確認 |
※当サイト作成の記入例。項目は堺市防犯カメラ設置補助基準 5(5)・6(2) をもとに、提供の根拠と媒体の扱いを追加
警察に映像を渡すときの手順と、書面での照会を受け取る理由は防犯カメラ映像の警察への提出で解説しています。住民や被害者本人から「映像を見せてほしい」と頼まれたときの考え方は防犯カメラ映像の開示請求を参考にしてください。
規程を作っても防げないこと
運用規程は設置者の内部のルールで、映される側との争いを規程だけで防ぐことはできません。規程を作る前に、次の3点は別に手当てしてください。
- 隣家や通行人との合意 — 規程に「住居の内部を映さない」と書いても、画角が向いていれば苦情は来ます。市原市は撮影対象区域の住民の同意書を申請書類にしているため、設置前に画角を見せて同意を取るのが確実です
- 規程と運用のずれ — 保存期間を14日と書いても、録画機の設定が上書き30日のままなら規程違反の状態になります。設置工事の立会いで録画機の設定画面を確認してください
- 顔識別機能を後から足す場合 — 顔で人物を検索できる機能を入れると、利用目的の特定や公表の扱いが変わります。規程の改正を先に行ってから機能を使い始めてください
防犯カメラの設置そのものに関わる法律の全体像は防犯カメラ設置の法律、商店会での運用例は商店街の防犯カメラにまとめています。
よくある質問
- 防犯カメラの運用規程は、法律で作ることが義務づけられていますか?
- 個人情報保護法に「防犯カメラの運用規程を作れ」という条文はありません。ただし、補助金を使う場合は要綱で作成や提出が条件になっていることがあり、我孫子市の要綱は実績報告までに管理運用規程を定めることを交付の条件にしています。また、映像を日時以外(顔や氏名)で検索できる仕組みにした場合は、個人データとして安全管理措置(個人情報保護法第23条)の対象になるため、取扱いのルールを文書にしておく必要があります。
- 自治会やマンション管理組合も、個人情報保護法の対象になりますか?
- なり得ます。個人情報保護委員会のQ&A(A1-54)は、営利・非営利を問わず、自治会・町内会やマンション管理組合も個人情報取扱事業者に該当し得るとしています。さらにQ&A(A5-6)は、町内会やマンション管理組合の運営を担う理事等は、監督が必要な「従業者」に当たると考えられるとしています。役員が映像を扱うなら、役員に守らせるルールとして規程を作っておくのが筋です。
- 録画映像の保存期間は何日にすればいいですか?
- 補助金の基準を満たす範囲で、7日から30日の間で決めるのが目安です。宗像市の要綱は補助対象のカメラに録画日数7日間以上を求め、堺市の補助基準は「おおむね30日以内で必要な保存期間を決め」るとしています。個人情報保護法第22条も、利用する必要がなくなったデータは遅滞なく消去するよう努めることを求めているため、長ければよいわけではありません。
- 警察から映像を見せてほしいと言われたら、規程上どう扱えばいいですか?
- 規程に「法令に基づく場合は提供できる」と書いておき、書面での照会を受けて管理責任者が判断する流れにします。警察の照会は刑事訴訟法第197条第2項に基づくもので、個人情報保護法第27条第1項第1号の「法令に基づく場合」に当たるため、本人の同意なしに提供できます。提供した日・相手・範囲は閲覧・提供記録簿に残してください。
規程を書き始める前に決める3つのこと
運用規程は、ひな形を写すことより、団体の中で3つの数字と役割を決めることのほうが時間がかかります。書き始める前に、次の3点を役員会や社内で決めてください。
- 補助金を使うか、使うならいつ規程を出すか — 宗像市・市原市型なら申請前、我孫子市型なら実績報告までに完成させます
- 保存期間を何日にするか — 7〜30日の間で決め、録画機の設定と規程の数字をそろえます
- 管理責任者と取扱者を誰にするか — 役職名で指定し、交代したときの引き継ぎ方まで決めます
業者に見積もりを頼むときは、決めた保存期間と台数を伝えると、HDDの容量まで含めた見積もりになります。見積もりを比べるときの注意点は防犯カメラ見積もりのコツと注意点、業者ごとの対応範囲の違いは防犯カメラ設置業者おすすめランキングで比較しています。
